猫系男子は私にだけ甘々

登場人物:
・早乙女 美結(さおとめ みゆ)
・綾小路 葵(あやのこうじ あおい)

《 Side:早乙女 美結 》
「はぁ...」
私、早乙女 美結が放課後の教室でため息をついていると、急に後ろから抱きしめられた。
「何ため息をついてんの?」
甘い声が耳元で囁かれる。
ビクッと思わず肩が震える。
バッと振り返ると、居たのはクラスの人気者、綾小路 葵くんくんだった。イケメンで、クールの猫系男子らしい。
でもなんで...?抱きしめられるほど仲良くないのに...
「お前、今日から俺のな。」
サラッと爆弾発言を言う綾小路くんに、私は反射的に拒否る。
「えぇっ?無理だよっ!そ、そもそもなんで私が...」
綾小路くんに釣り合わないし...
もっと別のいい人がいるもん!
「はぁ?なんで俺に反抗してんの?」
あわわっ綾小路くんがお怒り(?)モードだ...!ど、どうしよ...
私がしどろもどろになっていると、綾小路くんは微かに口角を上げた...、と思う。
「何?お前。ただの意気地無しかと思ったら意外と可愛いとこあんじゃん?」
私の前髪をいじる。あぁぁっ...!せっかく朝きっちりセットしたのに...!やめてください!と言いたかったけど、やっぱり怖いからダメだ...。私は抵抗もできずされるがままに虚しく前髪をいじられていた。
すると、綾小路くんはふと前髪をいじるのをやめ、顔を近づけてくる。
そして、おでこにキスをされた。
この状況を理解するのに2、3秒。
「きゃぁぁぁっ!?」
必死に飛び退いて逃げようとしたが、綾小路くんがそれを許さない。もっと強く抱きしめられ、体が密着される。顔に熱がぼぼぼっと上がっていくのが分かる。
「...ずっと俺から離れんなよ。お前に拒否権ねぇーから。」
う、嘘...!?というかなんでこんな私を好きになったの〜!?
私は心の絶叫を顔で表したのだった。

《 Side:綾小路 葵 》
早乙女 美結。
前から気になっていた。
男子から好かれそうな容姿、愛らしい雰囲気。本人は気づいていなさそうだったが、男子に莫大な人気がある彼女。
最初に話したのは、俺が放課後の時、人気がない廊下で資料を運んでいた。
「あ、あの...、大丈夫ですか...?」
心配そうに上目遣いで見つめてくる早乙女。最初は俺に媚びを売るためだと思ったが、本当に心配そうな目で俺を見つめてくる早乙女は、かなり無自覚の破壊力があった。でもそれを表に出したくはない。
「別に。平気だから。」
そう言って一度止まった足を動かそうとして一歩踏み出した時、
「だ、だめですっ...!私も持ちますっ...!」
譲らないというように資料の半分を持った早乙女。普通逆だろ、と思ったが、少しよろめきながらも純粋な笑顔で笑いかける早乙女が、不覚にも魅力的に見えた。その日から早乙女を目で追ったり、意識するようになった。
そして数週間経ったある日、昼休みに無意識に人気のない廊下を通りかかると、女子生徒が男子生徒に壁ドンされていた。俺は特に無感情で通り過ぎようとした。
すると、壁ドンしている男子生徒の声が聞こえた。
「なぁ早乙女。俺ずっとお前のこと好きでさ...」
早乙女?
彼女の名前を聞いた途端、気づいた時に俺は男子生徒の手を掴んでいた。
はっと我に返るが、静かな怒りが自分の心に灯っているのは確かで、ここで引くわけには行かなかった。
「おい、お前何やってんの?」
自分でも想像のつかない低い声が出た。
男子生徒は完全にビビって、俺が手を乱暴に離すと、脱兎のごとく逃げていった。
俺は振り返るのを躊躇った。
もしかしたら怯えられているかもしれない。
そういう自分の情けない恐怖を断ち切って、振り返ってみる。
「...大丈夫か?」
早乙女は潤んだ瞳で俺に抱きついた。
2、3秒処理が追いつかなかったが、抱きつかれたと理解した瞬間、耳に熱が行くのが分かった。俺は思わず顔を背ける。
「...?」
早乙女は首を傾げてこちらを見上げてくる。
その無防備の可愛さを直視してしまい、そろそろ心臓が持たなくなってきた。
しかもあんまり話したことない異性に抱きつくとか...無防備に程がある。
ていうか俺以外に抱きつかないで欲しい。
「綾小路くんっ、ありがとうっ...!」
そう言って俺の胸に顔を埋めてくる早乙女。
やばい。可愛すぎる。
抱きしめたい衝動をなんとか抑え、俺は早乙女の頭に顎を置いた。
それだけで心臓が跳ねるというのに、早乙女はそれ以上にビクリと体が跳ねていた。
その様子に僅かに口角が上がった。
小動物みたいで可愛い、と思う。
俺の柄じゃないと思うが、好きと言う気持ちは抑えられない。
......ん?
俺今早乙女の事好きって言ったか?
自覚した途端顔が赤くなる。
それを隠すように早乙女の頭に顔を埋める。
早乙女は驚いていたが俺は気にかけるどころじゃない。
あー、もうマジで.....
どうすればいいんだよ......
一人心の中でため息をつくのだった。


新登場人物:
・哀銘 涼良 (あいめい すずれ)
/詳細/ ツンデレ病み系毒舌男子。
・道明寺 蒼音 (どうみょうじ あおと)
/詳細/ 爽やかだけど腹黒系二重人格男子。

主要人物:
・早乙女 美結 (さおとめ みゆ)
・綾小路 葵 (あやのこうじ あおい)

《 Side:早乙女 美結 》
「あ、あの...」
私は今とても困っている。
その原因は、紛れもなく彼...、綾小路くん。
急にキスしてきたり、なんか距離近いし...
「ん?何。」
めっちゃ甘い声で抱きしめてくるし...
これ以上私の心臓が持たない...
よし、ここはちゃんと言おう...!
「は、離してください...!」
「んー、しょうがない。」
名残惜しそうに離してくれた綾小路くん。
意外と素直だな...
私は綾小路くんの頭を撫でたい衝動に陥ったが、頑張って我慢する。
だって綾小路くんが可愛いんだもん...!
「イチャイチャしないでくれる?目障りなんだけど。」
急に冷たい声が飛んできて、ビクリと肩が震えてしまった。
恐る恐る振り向くと、いたのは同じクラスの哀銘 涼良くん。ヘッドホンを首にかけ、黒のパーカーを来ているオシャレさん。前髪を目のちょっと上までにきっちり切っている美形くん。ちょっと怖いけど、大丈夫...!
「あ?」
すかさず綾小路くんが威嚇を効かせる。
け、喧嘩は良くないのにっ...
「ん...?もしかしてあんた綾小路?......ふぅーん。.....弱そ。」
そう言って煽るように口角を上げた哀銘くん
えぇっ!?そんなこと言っちゃダメだよ...
綾小路くんが傷ついちゃう!
でも怖いので綾小路くんと哀銘くんの間を割って入ることもできず。
なぜか綾小路くんは全く傷ついておらず。
なんでっ...!?とパニくる私を見もしない哀銘くん。そして私を庇うように前に立ってくれた綾小路くん。
自分の身は自分で守れるのに...
綾小路くんに感謝せざるを得なかった。
「ほらほら、喧嘩するのは良くないよ。」
救世主らしき声が聞こえた。
私は安堵のあまり、安心の笑みを浮かべる。
声のいる方へ見ると、天使のような笑みを浮かべた、クラスメイトの道明寺 蒼音くんだった。道明寺くんは笑顔で二人の間を割って入り、宥めるように言う。
「...。」
綾小路くんは興味ないと言わんばかりの顔で哀銘くんから目を逸らす。
その態度がムカついたのか、哀銘くんは睨みを効かせた。そして、睨みの矛先、視線は道明寺くんへ...。
なんで...!?道明寺くんは優しいのに...!
「あんたさっきからヒーローぶってんの?胡散臭い雰囲気隠せてないよ。」
なっ...。天使降臨の笑みを浮かべた道明寺くんがそんなわけないじゃん...!と感情を込めて哀銘くんを睨む。
哀銘はちらりと横目で私を捉える。
恐怖でビクッと肩が震える。
「...あんたさ、可愛いよね。」
「ふっ」と鼻で笑う哀銘くん。
褒めてるの...?貶してるの...?どっち...!?
「...おい。今の撤回しろ。」
綾小路くんは低い声を出して哀銘くんを睨む。
「なんで?普通に可愛いじゃん。あ、もしかして独占欲強い系?嫉妬魔はモテないよ。」
「...っ。」
「まあまあ、落ち着きなよ。ほら仲良しの握手。」
「あんたは笑顔の練習してな。」
「...。」
ピキッと、ほんの一瞬だけど、道明寺くんの笑顔に亀裂が入った...気がした。
き、気のせいだよね...!
道明寺くんは、爽やかで優しい笑顔を浮かべている...、い、良い人だもん...!
一瞬道明寺くんの顔が能面になった気がして、心の中で私はうぅっ、と頭を抱える。
なんかとにかく今の状況を良い雰囲気にしなきゃ!お互い、肩を組み合って、うははっ、あははっ、って笑顔で踊り回って...っ
と、とりあえずこの場を解決できるのは、私しかいない...!勇気出すんだ、私...!
「あ、あの!」
できるだけ大きな声を出す。
「......早乙女。」
綾小路くんが優しい瞳で笑みを浮かべてくれる。私に歩み寄り、何故か抱きしめた。
えっ?
ま、待ってよぉぉ...!!
ちょっと、こ、ここは...、肩を抱き合って、お、男の子の友情として、熱い握手を交わすところじゃないの...!?あ、綾小路くん...、シナリオ崩壊しちゃったよぉ......
「え、なにそれ。マウント行為やめてくんない?ウザイんですけど。」
「んー、ちょっとそれは目の保養じゃないなぁ。」
哀銘くんはともかく、や、やだなぁっ...
ど、道明寺くん...?目が笑ってないよ...?
そ、そして綾小路くんは...、い、一旦離そうね...?
あぁ、もうっ......
みんなにはごめんなさいだけど、今日は厄日だっ...。私は一人、申し訳ない気持ちで頭を抱えるのだった。


主要人物:
・早乙女 美結 (さおとめ みゆ)
・綾小路 葵 (あやのこうじ あおい)

登場人物:
・哀銘 涼良 (あいめい すずれ)
/詳細/ ツンデレ病み系毒舌男子。
・道明寺 蒼音 (どうみょうじ あおと)
/詳細/ 爽やかだけど腹黒系二重人格男子。

《 Side:哀銘 涼良 》
放課後の教室で、綾小路と道明寺、そして名前を忘れた顔が整っている女子と口論みたいなのを交わしていた。
一番ムカつくのが綾小路。あいつは多分あの気弱な女子のことが好きだろう。どさくさに紛れて守ってるし...。ヒーローかよ。そして気弱な女子は綾小路が言っていた、早乙女という名前だろう。顔も名前も綺麗。そんな柄でもないこと思った俺は、自分自身に舌打ちする。早乙女の肩が微かに跳ねた。綾小路は心配そうに早乙女の見ている。...なんだこれ。まるで俺が悪役みたいじゃん。......納得行かないし。しかも綾小路のあの鉄壁無表情はどうしたんだよ。好きな女子相手にあんなメロメロになんのか。俺は元カノ10人以上いるけど、全て俺がフった。理由は「飽きた」からだ。女子は結局全員媚びを売るために生きてきた下等生物だろ。...綾小路も同じことを考えていると思ったのに...。共感性を抱いていたのに...。あの女子のせいで全てが最悪だ。でもまんまと裏切った綾小路の方が心底憎い。だから、まずあいつが好きな女子─早乙女を奪う。俺のモンにして、綾小路に復讐する。しかも早乙女はまだ誰の色にも染まってないみたいだから好都合。俺って運良すぎだろ。思わず口角が上がる。爽やかぶってる腹黒男子───道明寺が俺を見てあははっと笑っていた。見透かされているような不快感が湧き上がってきた。ぎろりと道明寺を睨むが、道明寺は余裕の笑みで返してくる。
「あ、えと...、喧嘩は良くないですよ...」
早乙女が弱々しく口を挟んでくる。
綾小路が俺に喧嘩売るように牽制してくるが、今は早乙女を奪うのが最優先。
「別に喧嘩してない。で?お前早乙女だっけ。なんだよ、近くで見ると可愛いな。」
俺は女子が赤面するような甘いセリフを吐いて、顔を近づけ、耳元で囁く。
「......ウブだね。キスされた事ないの?」
早乙女の顔がみるみるうちに紅潮する。
綾小路が止める声が聞こえてくるが、俺はお構いなしに距離を縮めて、早乙女の肩に頭を置く。
「ふぇっ...!?」
意外にも無防備な声が返ってきて、一瞬動きが止まる。......こいつ、案外可愛いな。
「...お前の初めて、俺が全部貰うから。」
早乙女の耳たぶを甘噛みしようと顔をもっと近づけた瞬間、パシッと手を掴まれた。
......ちっ。
どうせ綾小路だろ、と思って気だるげに振り返ると、手を掴んだのは道明寺だった。
「早乙女さんは俺のだよ。横取りしないでくれる?......哀銘くん。」
最後、声が急激に低くなった。脅してるのか。......ふぅん。
「あー、無理だわ。いずれ俺が取るんで。」
身長差は3cmなのに、屈辱的だな。
横目で早乙女を見ると、綾小路に抱きしめられていた。無性に嫉妬心が湧き上がってくる。あー俺やっぱ早乙女の事好きじゃん。
......これからは手加減しないようにしよ。
そして、綾小路は顔を上げ、挑発的に俺と道明寺を見た。
「...こいつ、俺のだから。」
早乙女の方を見ると、かぁっと顔が赤くなっていた。かわいい、と思いながらも、綾小路の宣戦布告を無視するわけには行かない。
「最終的に俺が早乙女の彼氏になるんで。あんたらは全員海底に沈んでな。」
舌を出して人差し指で床を指さす。
「んー、俺が海底に沈むわけないから大丈夫。俺の彼女は早乙女さん一択だから。」
「あ?お前らに渡すわけねぇーだろ。早乙女の視界に一切映んな。邪魔。」
...ちっ。どいつもこいつも生意気だな。
そして当の本人はあわあわして筋金入りの鈍感だから気づいてないし。そんなとこも好きだけど。もうマジで...これ以上好きにさせんなよ...