万華鏡は月を巻き戻す

裏路地や日陰を通りながら、朔が迷いなく歩いていく。

「どこいくの?」

「もう少し。」

そう言う朔の横顔は、どこかワクワクしているようだった。

やがて視界が開ける。

「ここ…神社?」

「そう。」

境内には風鈴がずらりと並んでいて、風が吹くたびに
チリン、チリンと澄んだ音が響く。

耳をすますと、まるで風そのものが歌っているみたいにきれい。

「綺麗だね。」

「お参りしようか。」

「うん。」

二人で手を合わせる。
風鈴の音が背中をそっと押すように揺れていた。

「ここ、災いから守ってくれる神様がいるんだって。」

「そうなんだ。」

「だから…来たかったんだよね。
風鈴も綺麗だしさ。」

朔は少し照れたように笑う。

「それと、この神社の名前——
春咲く神社っていうんだって。」

「はるさく…?」

「漢字は違うけどさ、羽瑠と俺みたいじゃない?」

ニヤリと笑う朔。
その笑顔が、風鈴の音よりも胸に響いた。

夏の光の中で、風鈴がまた揺れる。
チリン、と優しい音が二人の間に落ちた。