万華鏡は月を巻き戻す


「うわ!気持ちいい!」

「だね!」

私が声をあげると、朔も同じように笑った。
波が足元をさらっていき、海水の冷たさが一気に身体を目覚めさせる。

朔が浮き輪の紐を軽く引っ張る。
その仕草が妙に頼もしい。

ちょうどそのとき、少し大きめの波が押し寄せた。
私の身体がふわっと浮いた瞬間、朔が自然に支えてくれる。

「さすがだね。」

「だろ?」

朔は得意げに胸を張る。
濡れた肌に陽が反射して、引き締まった胸筋がきらっと光った。

と思ったら、もう一度波がきて、海水が朔にかかり、びっしょりと濡れる。

「ふふ、びしょ濡れだ。」

「ほんとに。でも気持ちいいな!」

ふっと笑って髪をかきあげる。
濡れた前髪が額に張りつき、いつもより少し大人っぽい。
反対のその手は、ちゃんと私の浮き輪を離さないまま。

波の音、太陽の光、海の匂い。
全部が混ざって、夏休みの一瞬がきらきらしていた。
今日は…色々な不安も忘れてしまいそう。