万華鏡は月を巻き戻す

「海だ!」

「さすがに暑いね。」

「どうする? 海、入る?」

「もちろん!」

そう言って、二人は更衣室へ向かった。

私はワンピースタイプの水着に着替え、深呼吸してから外へ出る。
眩しい日差しの下、朔はすでに待っていて、水着の上にシャツを羽織っていた。

「お待たせ。」

「羽瑠……。ちょっと待って。」

「なになに?」

朔は顔を真っ赤にして、慌てて視線をそらす。

「これは……いけません。」

「え?」

「肌、見えすぎ。かわいすぎ。」

そう言うと、朔は自分が着ていたシャツを脱いで私に差し出した。

「これ、着てください。」

渡されたのはシンプルな白いTシャツ。

「え、いいの?」

「いいよ。」

「そっか。じゃあ……」

私はTシャツを受け取り、ふといたずらっぽく笑う。

「でもさ……どう? 可愛い?」

軽く裾をつまんで、くるりと回って見せる。

朔は一瞬固まり、真剣な顔で言った。

「めちゃくちゃ可愛いです。
だから……俺だけに見せてください。お願いします。」

あまりに真面目な言い方で、逆に胸がくすぐったくなる。
夏の風が二人の間を通り抜け、波の音が遠くで弾けていた。

朔のTシャツに身を包む。
ふわりと、朔の温もりが残っている。
思わず、すんっと匂いをかいでしまう。洗剤の香りと、朔の匂い。

「朔の匂いだ。」

「え? くさい!? 大丈夫!?」

「いい匂いだから大丈夫。」

「ほんとに!?」

朔が少し慌てる。その様子がまた可笑しくて、私は笑ってしまった。