それから自然と、朔と過ごす時間が増えた。
彼の飾らない明るさと、ふとしたときに見せる優しさが、
気づけば私の居心地の良い場所になっていた。
……だけど、時々胸の奥がざわつく。
(なんだろう、この感じ。
前から知ってるみたいな……)
そんな違和感を抱えたまま過ごしていたある日、
私は偶然、朔が他の女の子から告白されている場面を見てしまった。
「あの、好きです。付き合ってください。」
小柄で可愛い子だった。
緊張で頬を赤くして、まっすぐ朔を見つめている。
「ごめん。俺、他に好きな子いるから。」
朔は迷いなく即答した。
その言葉に胸がきゅっとなる。
理由は……自分でもよくわからない。
朔がゆっくりと歩いてくる。
私は思わず息を止めて、廊下の端でしゃがみ込んだ。
すると──
「盗み聞きとは、いい趣味してるね〜。」
「いや、そんなつもりじゃ……ごめん。」
「いいよ、別に。」
朔は軽く笑って肩をすくめる。
「よかったの?」
「なにが?」
「可愛い子だったよ?」
「そう?
俺は羽瑠に夢中。」
「またそんなこと言って……。」
胸がまた、少しだけ熱くなる。
「ねぇ羽瑠。
今度の休み、俺とデートしよ!」
「どこに?」
「うーん……水族館とか?」
「いいよ。」
「まじ? やった!」
朔は子どもみたいに嬉しそうに笑った。
その笑顔を見ていると、
さっきまでのざわつきが、少しだけ溶けていく気がした。


