万華鏡は月を巻き戻す

朔のおかげで中間テストはなんとか乗り切った。
明日からは待ちに待った夏休みだ。

終業式を終えたあと、私は委員会の仕事で体育館の椅子を片付けていた。
汗ばむ空気の中、椅子の脚が床をこする音が響く。

「月宮さん。先生が体育倉庫にこれ持ってってって言ってたよ。」

ふいに声をかけられ、反射的に振り向く。
誰だろうと思う間もなく、ダンボールをぐいっと押しつけられた。

「わかりました。」

受け取ったものの、知らない女子生徒だった。

(誰だろう……?)

そう思いながら、私は体育倉庫へ向かう。

歩きながらふと疑問が浮かんだ。

(ん? ちょっと待って。
そもそもこれ、中身なんだろう。)

立ち止まってダンボールを覗こうとした、その瞬間だった。

――ガシャン。

背後で重い音が響いた。

「……え?」

振り返ると、体育倉庫の扉が閉まっている。
ダンボールを脇に置き、慌てて駆け寄り、取っ手を引く。

ビクともしない。

「うそ……」

心臓が一気に早鐘を打ち始めた。

扉を叩いてみても、返事はない。
静まり返った倉庫の中に、自分の呼吸音だけが響く。

やられた。

完全に油断していた。
学校にはもう敵なんていないと思っていたのに。

薄暗い倉庫の中で、私は立ち尽くした。

(どうしよう……)

胸の奥に、じわじわと不安が広がっていく。