万華鏡は月を巻き戻す


それから抜き打ちテストが終わり、先生が採点をしたそばから答案が返されていった。

「はい、さっさと返します。先生びっくりです。みんな勉強してなさすぎて驚きです。」

教室中がざわつく。
紙が机に置かれる音、誰かの嘆き声、椅子のきしむ音。
その全部が混ざって、空気が少し重く感じた。

「うわー俺やばい!!」

「終わった……」

あちこちから悲惨な声が上がる。

私も答案を受け取った瞬間、心臓がひゅっと縮んだ。

――100点中48点。
半分も取れてないじゃん……。

思わず答案を伏せたくなる。

「おお! 七瀬、すごいじゃないか。満点だ。」

先生の声が教室に響く。

「ありがとうございまーす。」

朔はひらりと答案を受け取り、軽く笑って席に戻っていく。

嘘でしょ。
唖然として朔を見ると、彼は余裕そのものの表情で、またゆるりと手を振ってきた。

チャイムが鳴ると同時に、朔が私の机にやってきた。

「羽瑠、どうだった?」

「悲惨だよ。」

私は答案を少しだけ持ち上げて見せる。
朔が覗き込むと、眉をひょいと上げた。

「あら。」

「ってか、朔って頭良かったんだね。」

「まあね。」

軽く肩をすくめるその仕草が、なんだか悔しいくらい自然でかっこいい。

「勉強教えようか?」

ニヤリと笑う朔。
その顔が、妙に自信に満ちていて、胸が少しだけ熱くなる。