万華鏡は月を巻き戻す


「ねぇー、羽瑠。」

「なに?」

「駅前のアイス食べ行こうよ。」

「いいけど。」

「よし、放課後デートだ。」

「ちがう。ただ食べに行くだけ。」

そんな軽いやり取りをして、放課後。
校門を出ると、春の風がふわりと吹き抜けた。
並んで歩く影が、夕方のアスファルトに寄り添うように伸びている。

アイス屋の前に着くと、朔はメニューを見て目を輝かせた。

「うーん、俺はチョコとキャラメルとストロベリーのトリプルにする!」

「そんなに食べるの?」

「うん。食べられるときに食べる主義。」

「私は……チョコミントにしよ。」

「チョコミントってなんか大人。美味しい?」

「うん、さっぱりしてて美味しいよ。」

「ちょっとちょうだい。」

「いいよ。」

朔はスプーンでひと口すくって、ぱくり。

「ん。なんか歯磨き粉みたい。」

「うわー、これだからお子ちゃまは。
チョコミントの美味しさを知らないとは。」

「えーなんでー!
俺のも食べる?」

「いらない。」

朔は肩をすくめて笑った。
その横顔は夕陽に照らされて、少しだけ柔らかく見えた。