万華鏡は月を巻き戻す

朔のアパートに入ると、
彼は慣れた手つきで材料をキッチンに並べていく。

「よし、じゃあ羽瑠はイチゴ洗って!」

「はい!」

二人で並んで作業を進める。
キッチンに立つだけで、なんだか新婚みたいで照れる。

しばらくして――

「ねぇ、」

「ん?」

「なんか思ってたのと違くない?」

「確かに!」

完成したショートケーキは、
生クリームが足りなくて、見栄えはちょっと残念。

でも、朔は胸を張って言う。

「でも、味は美味しいはず!」

「そうだといいけど。」

朔はロウソクを取り出し、
ケーキの真ん中にちょこんと立てた。

「よし、蝋燭つけて。」

火が灯ると、部屋の明かりが少しだけ揺れる。

朔が笑いながら歌い出す。

「ハッピーバースデイトウーユー、
羽瑠と俺!」

思わず吹き出してしまう。

「自分も祝うんだ。」

「当たり前でしょ。二人の誕生日だから。」

朔はそう言って、
ロウソクの火を見つめながら少しだけ声を落とす。

「……一緒に祝えるの、嬉しい。」

その言い方があまりにも優しくて、
胸がぎゅっとなる。

未来から来た朔。
いつかいなくなるかもしれない朔。

でも今は、
同じ部屋で、同じケーキを前にして笑っている。

「じゃあ、ふたりで吹き消そ。」

「うん。」

せーの――

ふたりの息が重なって、
小さな火がふっと消えた。

その瞬間、
ロケットペンダントが胸元で小さく揺れた。