万華鏡は月を巻き戻す


「あ、そうだ! 笛持ってる?」

「うん、朔が持っててって言ってたからあるよ。」

水族館で買ってもらった、小さな笛を取り出す。

朔はそれを見るなり、ぱっと目を輝かせた。

「これも一緒につけといてよ。
羽瑠が呼んだら俺がいつでも来れるようにさ。」

ふっと笑って、ロケットペンダントを開く。

「……入るかな?」

そう言いながら、笛をロケットの中にそっと当ててみる。
真剣な顔で角度を変えたり、押し込まないように慎重に試したりして――

「……あれ?入らないや」

小さく首をかしげる朔が、なんだか可愛くて笑ってしまう。

「そりゃ無理だよ、朔。笛だよ?」

「えー、入ると思ったんだけどなぁ」

朔は苦笑しながら笛を見つめ、
少しだけ寂しそうに息を吐いた。

「じゃあさ、外に付けといてよ。
 羽瑠が呼んだら……俺、どこにいても気づけるように」

ふっと笑ったその横顔は、
どうしようもなく優しくて、
どこか遠くを見ているようだった。


「うん。ねぇ、これつけてもいいかな?」

自分の首を指さす。

「もちろん。」

朔は嬉しそうに笑った。

「なんか髪が引っかかる。」

「貸して……。」

そっと首元に朔の指が触れる。
くすぐったくて、思わず肩がすくむ。

「はい、できた!可愛いね。」

「ありがとう。」

「俺もつけよう! ペアルック!」

「なんか急に恥ずかしい。
外してもいい?」

「いや、だめでしょ!」

朔は即答して、子どもみたいに笑った。

その笑顔が眩しくて、
胸の奥がふわっと温かくなる。