17歳の夏。
祖母が亡くなり、片付けのために海外から日本へ戻ってきた。
久しぶりの家は、静かで、どこか懐かしい匂いがした。
押し入れを開けると、古い箱の中に、ひとつだけ色の違うものがあった。
――万華鏡。
手に取った瞬間、胸の奥がふっと温かくなる。
これ、昔もらったんだ。
初恋の人に。
俺よりも年上で無邪気で綺麗な人だった。
一目惚れだった。
「腎臓、あげられたらいいのにね。」
初対面の俺にそんな軽口を言ってくれた人。
懐かしさに負けて、そっと覗き込む。
その瞬間、色がゆっくりと動き出した。
映っていたのは――7歳の俺。
余命宣告を受けて、呆然とした顔。
両親の泣き声を聞きたくなくて、病院を抜け出してきた公園で
あの人に会った。
10歳で移植した手術室。
成長していく俺の姿。
まるで、誰かが“俺の人生”を優しくなぞって見せているみたいだった。
けれど、次の瞬間。
映像がふっと揺れ、逆再生を始めた。
色がほどけていき、光がしぼんでいく。
そして――止まった。
写真だ。
月宮羽瑠が笑顔で笑っている。
その下には、眠るように目を閉じている彼女。
知らないはずなのに、胸がぎゅっと痛む。
誰かが泣いている声が、遠くから聞こえた気がした。
『何で、爺ちゃんより先に死ぬんだよ……』
『羽瑠…いやよ。どうしてよ。』
『なんで…こんなめに。』
静かな部屋の中で、万華鏡だけが別の世界につながっているようだった。
映像がまた変わる。
黒い背景に、白い文字が浮かぶ。
『月の満ち欠け……やりなおしますか?』
意味がわからない。
でも、なぜか“選ばなきゃいけない気がする”自分が怖くて、
慌てて目を離した。
部屋は元の静けさに戻っていた。
ただ、手の中の万華鏡だけが、ほんのり温かかった。
祖母が亡くなり、片付けのために海外から日本へ戻ってきた。
久しぶりの家は、静かで、どこか懐かしい匂いがした。
押し入れを開けると、古い箱の中に、ひとつだけ色の違うものがあった。
――万華鏡。
手に取った瞬間、胸の奥がふっと温かくなる。
これ、昔もらったんだ。
初恋の人に。
俺よりも年上で無邪気で綺麗な人だった。
一目惚れだった。
「腎臓、あげられたらいいのにね。」
初対面の俺にそんな軽口を言ってくれた人。
懐かしさに負けて、そっと覗き込む。
その瞬間、色がゆっくりと動き出した。
映っていたのは――7歳の俺。
余命宣告を受けて、呆然とした顔。
両親の泣き声を聞きたくなくて、病院を抜け出してきた公園で
あの人に会った。
10歳で移植した手術室。
成長していく俺の姿。
まるで、誰かが“俺の人生”を優しくなぞって見せているみたいだった。
けれど、次の瞬間。
映像がふっと揺れ、逆再生を始めた。
色がほどけていき、光がしぼんでいく。
そして――止まった。
写真だ。
月宮羽瑠が笑顔で笑っている。
その下には、眠るように目を閉じている彼女。
知らないはずなのに、胸がぎゅっと痛む。
誰かが泣いている声が、遠くから聞こえた気がした。
『何で、爺ちゃんより先に死ぬんだよ……』
『羽瑠…いやよ。どうしてよ。』
『なんで…こんなめに。』
静かな部屋の中で、万華鏡だけが別の世界につながっているようだった。
映像がまた変わる。
黒い背景に、白い文字が浮かぶ。
『月の満ち欠け……やりなおしますか?』
意味がわからない。
でも、なぜか“選ばなきゃいけない気がする”自分が怖くて、
慌てて目を離した。
部屋は元の静けさに戻っていた。
ただ、手の中の万華鏡だけが、ほんのり温かかった。


