万華鏡は月を巻き戻す

それから朔は、毎日。

「おはよう! 付き合って!」

「羽瑠、今日ポニーテール? かわいい! 好き!」

「ねぇ! 放課後アイス食べに行こうよ!
デートしよ!」

毎日毎日。本当に毎日。
息をするみたいに口説いてくる。

(……ほんとになんなの。)

「ねぇ、さすがにしつこいんだけど。」

「じゃあ付き合おうよ。
そしたら全部解決。」

「だから、そうじゃないでしょ。」

「そうなの?
じゃあさ、俺に連絡先教えてよ。
それで今日は満足するから。」

そう言って朔は、すっとしゃがみ込んで
上目遣いでこちらを見上げてくる。

春の光が彼の瞳に反射して、
妙にきらきらして見えた。

(……ずるい。そういう顔。)

「……わかったよ。」

「やった!」

朔はぱあっと顔を明るくして笑った。
その笑顔があまりにも無邪気で、
思わず私の肩の力もふっと抜ける。

スマホを取り出して連絡先を交換する。
画面に“七瀬朔”の文字が表示された瞬間、
胸の奥がほんの少しだけ熱くなった。