万華鏡は月を巻き戻す


「ねぇ、そういえば。
羽瑠って誕生日いつ?」

朔が歩幅を合わせながら、ふと横目でこちらを見る。

「いきなり?
来週。」

「え!? まじ?」

驚きすぎて声が半音上がる。
その反応に、私は思わず笑ってしまった。

「うん。
朔は?」

「俺は四月一日。」

「終わってるじゃん!」

「エイプリルフールだから嘘だって言われるし、春休み中だから忘れられるし。」

「……あー、そうなんだ。」

少し気の毒で、でもちょっと可笑しい。
朔は肩をすくめて見せた。

「じゃあさ、二人で生誕祭しようよ!」

「いいよ。」

「よし!
じゃあ、俺に誕生日プラン考えさせて。」

「うん。」

朔の声が、どこか弾んでいた。
夕方の光が彼の横顔に差し込み、ほんの少しだけ幼く見える。
胸の奥の不安はまだ消えないけれど、その瞬間だけは、夏の気配が少しだけ軽く感じられた。