万華鏡は月を巻き戻す


その後、朔と二人で遊園地を歩いた。
夕暮れの光が観覧車の鉄骨を赤く染めていて、
どこか現実じゃないみたいに見えた。

「ねぇ、せっかくだからあれ乗ろう。」

朔が指差した先――観覧車。

「うん、いいよ。」

二人で並んで乗り込む。
ゴンドラがゆっくりと浮かび上がり、
遊園地全体がオレンジ色に包まれていく。

「とりあえず良かったね。」

「そうだね。」

沈黙が落ちる。
でも嫌な沈黙じゃない。
夕暮れの光が二人の間をやわらかく満たしていた。

「ねぇ、隣いっていい?」

朔がこちらを見つめる。
その目は、さっきより少しだけ大人びていた。

「え?バランス悪くなんない?」

「大丈夫大丈夫。」

彼はそっと横に腰掛ける。
肩が触れそうで、触れない距離。
その近さに、胸が少しだけざわついた。

「ねぇ、朔。」

「なに?」

「私に隠してることないよね?」

「ないよ。」

朔は外の景色を見たまま答える。
その横顔は静かすぎて、逆に嘘だと分かってしまう。

――うそだ。

でも、それ以上は聞けなかった。
聞いてしまえば、
この夕暮れの温度も、
隣にいる彼の気配も、
全部壊れてしまう気がした。

だから私は、
ただ黙って、
沈む夕陽を一緒に見ていた。