万華鏡は月を巻き戻す


朔は及川のコスプレ写真を自分のスマホに転送し、
画面をちらりと見せつけるように掲げた。

「今後一切、羽瑠を追いかけ回したりしませんね?」

「し、しない!絶対にしない!」

「もしするようなら……わかってますよね。
これ、世に放出します。」

コスプレ写真が、
朔の指先でゆらりと揺れる。

「わ、わかったから……!
それだけは……それだけは勘弁してくれ……!」

及川さんは半泣きで頭を下げ続けた。

私はその様子を見ながら、
胸の奥でふっと力が抜ける。

「……とりあえず、一件落着……なのかな?」

朔はスマホをしまいながら、
少しだけ肩の力を抜いた。

「うん。少なくとも“犯人”じゃない。
ただの……暴走気味のパン屋の漫画家さんだった。」

「ただの……って言っていいのかな……」

「まあ、危害を加える気はなかったってわかっただけでも十分。」

朔は私の頭を軽くぽんと撫でた。

本命の容疑者は、別にいるってことか。
遊園地の明るい音楽が急に遠く感じた。

一件落着――
でも、事件そのものはまだ終わっていない。