万華鏡は月を巻き戻す

「と、とりあえず……その、危ないものは下ろしてくれ。
羽瑠ちゃんに危害を加えるつもりなんて、本当にないんだ。」

及川さんは縮こまりながら必死に訴える。

朔はしばらく黙って見つめたあと、
「わかったよ」と言って、相手への圧を少し緩めた。

「スマホ出して。」

「え……?」

「写真とか撮ってないよね?」

「い、いや……その……ほんとに勘弁してください……」

「じゃあ警察呼ぶよ。
理由なんていくらでも作ればあるし。」

淡々とした朔の声に、及川さんは観念したようにスマホを差し出した。

朔が画面を確認していると、
ふと手が止まった。

「どうしたの?」

私が覗き込むと――

「いや……あの、これ……」

画面には、
魔法少女の衣装を着た“及川本人”の写真が映っていた。

「ぐふっ……」

思わず変な声が漏れた。

「ご、ごめんなさい……ふふ……」

堪えきれず、肩が震える。

朔も目をそらしながら小さく咳払いした。

「……これは、どういう……?」

及川さんは真っ赤になりながら、
蚊の鳴くような声で言った。

「そ、それは……資料です……
自分で着てみないと、描くときのシワとか動きが……わからなくて……」

その瞬間、
緊張で張りつめていた空気が、
一気にどこかへ吹き飛んだ。