万華鏡は月を巻き戻す

朔が静かに言った。

「うーん……荷物、見させてもらうよ。それで警察に渡すか判断する。」

「そ、そ、それは……!」

朔は及川のバッグを手際よく開き、中身をバサバサと広げた。

「や、やめてくれーー!」

床に散らばったのは――

「写真……?いや、紙?」

私は思わず手に取る。

そこに描かれていたのは、
フリルの衣装を着た“少女”。

「魔法少女……?」

「これ……羽瑠に似てる。」

「え?うそ?」

その瞬間、及川さんが慌てて叫んだ。

「あのっ……だから!
それ、俺が描いてる漫画なんだ!」

「え?」

朔と私は顔を見合わせる。

「漫画を描いてて……羽瑠ちゃんをモデルにしてたんだ!
でも……魔法少女に、か、彼氏はタブーで……。
だから、その……どうしても気になって……!」

言いながら、及川さんは顔を真っ赤にして俯いた。

追ってきた理由が、
“嫉妬”というより“創作の暴走”だったと分かり、
私は言葉を失う。

朔は深く息を吐き、冷静に言った。

「……つまり、羽瑠に本当に彼氏がいるかどうか、
確認したくて追ってきたってこと?」

「そ、そう……です……」

朔の目が細くなる。

「いや、普通に危ないから。」

その静かな一言に、及川さんは肩をすくめて縮こまった。