万華鏡は月を巻き戻す

昼休み。

転校してきて、まだ一週間。
それなのに七瀬朔は、もうクラスの中心にいた。

体育館裏のコートでは、男子たちとバスケをしている。
軽やかに跳び、ボールを受け、笑いながらシュートを決める。

(運動神経まで良いのか……)

他クラスの女子たちがフェンス越しにキャーキャー騒いでいる。
その光景を眺めながら、私は思う。

──そんな彼が、なんで私に?

「いやぁ〜かっこいいね七瀬くん!
いいなぁ羽瑠。そんな彼に“付き合って”なんて言われて羨ましい!」

みなが興奮気味に肘でつついてくる。

「いや、よくわかんないよね。
なんなんだろう、あの人。」

そう言いながら視線を向けると、
ちょうど朔と目が合った。

彼は一瞬嬉しそうに目を細め、
ニコッと笑って大きく手を振る。

思わず、私はひっそりと小さく手を振り返した。

すると──

朔が、バスケを放り出してこちらへ駆けてくる。

「羽瑠!どうだった!?
俺、かっこよかった?」

「うん。まあ。」

「よし、じゃあ俺と付き合おう。」

「それはない。」

「ないかー。残念。」

全然残念そうじゃない顔で笑う朔。
その様子に、みながさらにテンションを上げる。

「ねぇねぇ七瀬くん、本当に一目惚れってやつ!?」

「ん?そうだよ。
ビビッとね!」

「へぇ〜。」

みなが感心したように頷く。

私は思わず口を開いた。

「……なんで? 他にも可愛い子いるでしょ。」

朔は少しだけ首をかしげ、
まるで当たり前のことを言うように答えた。

「ん?俺はそうは思わないかな。
羽瑠が、俺の特別。」

「……そんな適当な。」

「いやぁ!青春だね!」

みなが楽しそうに手を叩く。