「次さ、あれ行かない?」
朔が楽しそうに指をさす。
人だかりの向こうに、黒い幕で覆われた入口。
中からは、誰かの悲鳴とも笑い声ともつかない音が漏れてきて、足元がそわそわする。
「ねぇ、待って。絶対置いていかないで。」
「置いてかないよ。
ほら、お手をどうぞ。お姫様。」
「ひぃー……暗い!こわい!」
私は思わず朔にぐっと近づく。
「近いね。
なんか俺は違うドキドキ感じるんだけど。」
「そういうのいいから!
ひぃー!!こわっ!!」
暗がりのお化け屋敷。
足元のライトがぼんやり揺れて、影が壁に伸びる。
「朔は平気なの?」
「うん。偽物だし。
お化けより人間のほうが怖いよ。」
「まあ、実害あるのは人だしね……」
そう言った瞬間、
血だらけの人形がカタンと飛び出してきた。
「やっぱりこわい!!」
「はは、羽瑠可愛い。」
朔は笑いながら、私の手をぎゅっと握り返す。
その手が温かくて、怖さが少しだけ薄れた。
でも――
この“偽物の恐怖”の裏で、
本物の危険が近づいているかもしれないと思うと背筋が冷える。


