万華鏡は月を巻き戻す

そして、遊園地デート当日。

「なんか朔、荷物多くない?」

「うん、色々とね。」

「へぇー……?」

何を持ってきたのか気になったけど、朔はそれ以上言わなかった。

「それにしても、羽瑠。今日の格好、めちゃくちゃ可愛いね!」

シフォン素材のワンピースに短パン、スニーカー。
動きやすさ重視だけど、ちゃんと“デート仕様”にしたつもり。

「ありがとう。一応デートでしょ?」

「そうだね。しっかりデートだ!」

朔は嬉しそうに私の手を引いた。

午前中は普通に楽しんだ。
ジェットコースターで叫んで、コーヒーカップで目を回して。

「まずい、普通に楽しんでた。」

私がそう言うと、朔は肩をすくめて笑った。

「いいじゃん。何もなければそれでいいし。」

その笑顔があまりにも自然で、
“事件のこと”を忘れそうになる。

でも――
朔の背負っている大きめのリュックが、
時々カサッと音を立てるたびに、現実に引き戻された。

彼は“何か”を想定している。
今日、何かが起こる可能性を。

そのことが、胸の奥でじわりと重くなる。