万華鏡は月を巻き戻す

「そこのカフェスペースで食べてっていいですか?」

私が指さすと、及川さんは少しぎこちなく頷いた。

「あー、もちろん。」

「ありがとう!」

そう言って、私と朔はあえて及川さんの視界に入る席に座った。

「予想以上に動揺してる。」

朔が小さく、耳元で囁く。

「そうだね……。」

「じゃあ、もうちょい“恋人っぽい”ことする?」

「え?」

「はい、あーん。」

「えっ!?ここで!?」

「ほら、怪しまれるよ。」

「……あ、あーん。」

朔は満足そうに微笑み、私の口元をじっと見つめる。

「ほっぺにカスついてるよ。」

そう言って、指先でそっと触れ、
そのまま何気ない仕草で拭い取って――ぺろっと舐めた。

一瞬、息が止まった。

こ、こいつ……。
色気出すの反則でしょ。
見惚れちゃったじゃん……!