万華鏡は月を巻き戻す

「それで……他に何か分かったことは?」

「“他”というと……。
当日、羽瑠は夏祭りに行っていたらしい。ただ、誰と行ったのかは最後まで分からなかった。
そして、そのまま姿を消した。」

「……そう。」

「でも、話はそこで終わらなかったんだ。」

「え?」

「“花舞う少女連続殺人事件”」

「なにそれ……?」

「羽瑠のあと、三人の少女が殺された。
全員十七歳の女子高生で、どこか羽瑠と似た雰囲気を持っていた。」

「……嘘でしょ。」

「しかも、遺体のそばには必ず花が置かれていた。
赤いチューリップ、カーネーション、マーガレット。
どれも“愛”を象徴する花だ。」

「ねぇ……もし私が狙われなかったとしたら、他の子がまた……」

朔は静かに首を振った。

「それは、多分ない。」

「どうして。」

「どうしても……羽瑠だけが特別だったんだ。
その後の殺しは、喉の渇きを無理やり癒すみたいな……そんな、代わりの行為に過ぎなかったんだと思う。」

「はあ……なんか、一気に怖くなってきた。」

「ごめん。」

「いや、大丈夫。自分で聞いといてビビってるだけだし。」

そう言った瞬間、朔の手がそっと頭に触れた。
軽く、安心させるみたいにポンと撫でられる。

「羽瑠。」

「ん?」

「大丈夫だよ。俺がいる。」

「……うん。」

「もし怖かったら、調べるのは俺がやる。
羽瑠は家にいて。」

「それはない!」

「そうなの?」

「だって、これは私のことだよ。
私の未来を……誰かに奪わせたりなんて、絶対にしない。」

朔は少しだけ目を細めて、静かに頷いた。

「……うん。そうだね。」