万華鏡は月を巻き戻す

「はあー、強いね、羽瑠は。
さすが俺の惚れた人。」

わざとらしくため息をつきながらも、どこか誇らしげに笑う。

「……ねぇ、本当に私のどこが好きなの?」

気づけば口からこぼれていた。
風にさらわれそうな小さな声だったのに、彼はしっかり拾う。

「そこ聞く?」

ニヤッと口角を上げる。
からかうときの、あの癖のある笑い方。

「だって、わからないから。
朔が私を助けようとしてくれる理由も。」

自分でも弱音っぽいと思った。
でも、聞かずにはいられなかった。

「うーん……可愛いところ。」

「またそれ?」

「授業中眠いの我慢して、ほっぺ引っ張ってるとことか。
美味しいもの食べるときに目元がゆるむとことか。
たまに空ぼーっと眺めて──」

「もう、もういいから!」

「えー、まだあるのに。」

「恥ずかしいんだけど。」

「じゃあ、また気が向いたら話してあげる。」

軽く言いながら、朔は私の頭をぽんと撫でた。
その手つきが優しくて、胸の奥がじんわり熱くなる。

キーンコーンカーンコーン。

チャイムが鳴り、屋上の静けさが現実に引き戻された。

「さて、授業戻ろう。
放課後、話をしよう。」

「……うん。」

階段へ向かう足音が二つ。
昼の光が薄くなり、風がそっと背中を押す。

二人並んで、屋上をあとにした。