万華鏡は月を巻き戻す


「遅くまですみません。
お邪魔しました。」

朔が丁寧に頭を下げる。

「いいえ、こちらこそご馳走様になっちゃって。ありがとうね!」

「またおいで。」

母も父も、どこか嬉しそうに微笑んだ。

玄関の外まで見送りに出る。
扉が閉まると、急に静かになって、
私と朔だけが夜の空気の中に残った。

「オムライス、ご馳走様。美味しかった。」

「それなら良かった。
……良いご家族だね。」

「なんか賑やかで恥ずかしいよ。」

そう言うと、朔は少しだけ真剣な顔になった。

「……絶対奪わせないよ。」

「え?」

「羽瑠のことも、羽瑠の家族からも。
奪わせたりなんてしない。」

胸の奥がぎゅっとなる。
その言葉は重いのに、どこか温かかった。

「朔……」

朔ははっとして、少し照れたように笑う。

「ごめん。暗くなっちゃったね。
また月曜日。」

「うん。ねぇ、朔!」

「なに?」

「ありがとう。」

朔は一瞬だけ目を細めて、
優しくうなずいた。

「うん。またね。」

その声が、夜風よりもあたたかかった。