万華鏡は月を巻き戻す

「七瀬くん、めっちゃかっこよくない!?」
みなが机に身を乗り出してくる。

「そうだねー。」
私は適当に返す。こういうときの“みな”は止まらない。

案の定、彼の周りにはもう人だかりができていた。
明るく笑う声が教室に響いて、
その中心にいるのは──転校生の七瀬朔。

(すごいな…もう人気者じゃん。)

ふと視線を感じて顔を上げると、
彼と目が合った。

一瞬だけ驚いたように目を見開き、
次の瞬間にはまっすぐこちらへ歩いてくる。

「あの!」

「……え、私?」

教室中の視線が一気に集まる。

「好きです! 付き合ってください!」

「はあっ!?」

「一目惚れしました!」

満面の笑みで言い切る朔。
教室は一瞬で騒然となった。

(こいつ……何言ってんの!?)

「いや、無理です。」

即答した私に、彼は少しもめげない。

「そっか。じゃあ友達からどうですか?」

そう言って、まっすぐ手を差し出してくる。

「え……あ、うん。」

圧に押されて返事をすると、
その手をしっかり握られた。

「よろしくね、月宮さん。」

──私、名乗ってないんだけど。