万華鏡は月を巻き戻す

「とりあえず…どうするの?」

「まずは、一人目。
湯浅透。彼を調べる。
彼が来る日に、俺も羽瑠の家に行く。
そこで探りを入れてみる」

「うーん……ただお母さんとしゃべってるだけだけどなー。
でもなんで家族にそれを言ってないんだろう。
ってか……どうやって調べたの?」

「近所の公園で、奥さんと娘さんが遊んでた。
そこで他の人と話してるのを聞いたんだ。
“今日は仕事”って。
でもその日は仕事じゃなくて、羽瑠の家に行ってた」

「なんか……探偵みたいだね」

朔は肩をすくめて笑う。
その笑顔が、妙に頼もしくて、妙に怖い。

そして、その日が思ったより早く来た。

昼休みの屋上。
母からのメッセージをみて、私は朔に伝えた。

「来週、透さんが遊びに来るみたい。」

「わかった。
ねえ……」

「なに?」

「はじめての彼女訪問じゃん!
俺、緊張するんだけど!」

「まって!そもそも!付き合ってないんだけど!」

「いや……でも、彼氏でもないのに家に行くってさ、逆にどうなの?」

「え、別に“友達です!”でよくない?」

「えー、そこは“彼氏です”って言わせてよー」

そう言って拗ねる朔。
紙パックのジュースを飲みながら頬を膨らませてる。

……ちょっと可愛い。

でも、胸の奥がまた静かに軋む。

“彼氏”って言葉に照れる自分と、
“容疑者を探るために家に来る”という現実が、
同時に存在しているのが怖かった。

朔はどこまで本気で、
どこまで“未来の使命”で動いているんだろう。

その境界が、まだわからない。