万華鏡は月を巻き戻す


「それで…この周りの人達が怪しい人?」

「そう。」

朔は淡々と答える。
その落ち着きが逆に怖い。

模造紙には、私の周りにいる4人の名前が書かれていた。
線で繋がれ、まるで“容疑者リスト”みたいに。

1人目――湯浅 透(40)
母の弟、つまり叔父。薬剤師。
妻・真実(37)、娘・友梨(5)の3人家族。


3週間に一度、私の家に来ている。
……けれど、家族にはそれを言っていないらしい。

「え、なんで言ってないの……?」

思わず呟く。
朔は視線を落としたまま、淡々と続ける。

2人目――及川 康(52)
近所のパン屋のおじさん。
私がメロンパンを買うと、必ずクロワッサンを“おまけ”してくれる。

「それ、ただの優しい人じゃないの……?」

「優しい人が全員安全とは限らないよ。」

その言い方が妙に冷たくて、背筋がぞくりとした。

3人目―速川 湊(18)
湊高校三年。サッカー部。人気者。
7月18日――夏休み前に私へ告白。
私は断ったとかかれている。

「……ってか私この人にこれから告白されるってこと?」

「そうだよ。
だから断られた腹いせか、愛によるものか…。」

朔の声が低く落ちる。

4人目――黒木 雅信(62)
黒木病院の院長。

「院長先生まで……?」

「むしろ最有力候補だったんだけど。
アリバイがあったんだ。」

淡々とした朔の声が、逆に胸を締めつける。

模造紙の上で、4人の名前が私を囲むように配置されている。
まるで、逃げ場がないみたいに。

「……ねぇ朔。
これ、本当に全部調べたの?」

「うん。
羽瑠を守るために、必要だったから。」

その言葉は優しいはずなのに、
どこか“覚悟”みたいな重さがあった。

胸の奥が、また静かに軋む。