万華鏡は月を巻き戻す


朔が模造紙を広げる。

ぱさり、と紙が開く音。
その瞬間、空気が変わった。

そして朔は、迷いのない声で言った。

「羽瑠は、8月13日の夏祭りの日に、殺されるんだ」

「え?冗談?」

頭を殴られたみたいな衝撃。
手足が一気に冷えていく。
笑ってほしくて、首を振る。
でも――目の前の朔は本気だった。

「待って……誰に?」

「それがわからない。
だから俺は、それを阻止するために来た。」

「……ま、まじか……
え、私、親より先に死ぬの?
待って、お爺ちゃんより先?
うそ……」

項垂れた私を、朔は静かに見つめる。

「ごめん。不安にさせて。
でも正直、俺だけじゃ限界なところもあって……
だけど絶対死なせない。
羽瑠は俺が守るから」

その目は、冗談の入り込む余地がないほど真剣だった。

「ねぇ……なんで?
なんで私のために?」

朔は一拍置いて、まっすぐ言った。

「一目惚れだから。」

「それ本気?」

「本気。」

「はあー……そっか……」

胸の奥がざわつく。
怖いのに、どこか温かい。
でもその温かさは、模造紙を見た瞬間に凍りついた。

そこには、私を中心に、私を取り囲む人物の名前や線がびっしりと書かれていた。

「……それにしたってさ。
なにこれ。朔は私のストーカーなの?」

「うーん。そうとも言えるけど、そうとも言えない。」

「いや、情報細かすぎない? こわいわ。」

私の行動パターン、交友関係、家族。
自分の人生が“事件の資料”みたいに整理されている光景に、背筋がぞくりとした。

――まるで、私の知らないところで、
私の人生がすでに“誰かの手”で動かされているみたいで。