車椅子に座ったお爺ちゃんが、看護師さんに付き添われながら花壇の花を眺めていた。
「お爺ちゃん!」
私の声に、お爺ちゃんがゆっくり振り向く。
「羽瑠。どうした? 学校は?」
「今日はサボった。」
「そうか。」
「お爺ちゃんに会いたくなって。」
「そうか。
まあ、せっかく来たんだ。話をするか。」
看護師さんに軽く会釈してから、私はお爺ちゃんの車椅子を押して近くのベンチへ移動した。
自分はその横に腰を下ろす。
胸の奥がまだざわざわしている。
朔の言葉が、頭のどこかでずっと反響していた。
「で、学校をサボってどうしたんだ? 嫌なことでもあったのか?」
「うーん、なんか。
よくわからない人がいるんだよね。」
「なんだそれ。」
「まだ会ってそんなに経ってないのに私のこと好きだって言うの。一目惚れって。
かといって、遊びで言ってるほど軽くもないような感じでさ。」
言いながら、自分でも整理がついていないのがわかる。
胸の奥がきゅっと締めつけられる。
「それに……なんかよく分からないの。
会ったことあるような懐かしさもあって。
変な感じの人。」
言葉にして初めて、
“怖い”と“惹かれてる”が同時にあることに気づく。
その矛盾が余計に苦しい。


