万華鏡は月を巻き戻す

「これって……どういうこと?」

声が震えていた。
自分でも抑えられないほどに。

朔は押し入れの前に立つ私を見て、
少しだけ困ったように眉を寄せた。

「うーん、難しいな……。」

「私のことを……殺すの?」

喉がひりつく。
言葉にした瞬間、足がすっと冷たくなった。

「……まさか。違うよ。」

朔は即答した。
でも、その声はいつもの軽さじゃない。

「あなたは……誰なの?」

問いかけると、朔は視線をそらし、
何かを探すように天井を見上げた。

「うーん。」

曖昧な返事。
その沈黙が怖い。

「私のこと好きとか、一目惚れとか言ったのも嘘ってこと?
何か目的があったから?」

「うーん……嘘ではない。
でも、目的はあった。」

胸の奥がぎゅっと痛む。

「そう。……ごめん。帰る。」

震える手でプリントを差し出す。

「これ、プリント。
あと、ゼリーとか……置いとく。」

「ありがとう。」

朔は受け取った。
その声は静かで、どこか寂しそうだった。

「お大事に。」

それだけ言って、私は玄関へ向かった。
足がもつれそうになるのを必死にこらえながら。

ドアを開けて外に出た瞬間、
冷たい空気が一気に肺に流れ込む。

私は逃げるように階段を降りた。

心臓が痛いほど鳴っている。

(朔って……いったい……)