万華鏡は月を巻き戻す

鍋の準備をしていると、
黒木がふと手を止めて、こちらを見た。

「なに笑ってるの?黒木先生。」

私は思わず眉をひそめる。
朔も同じように黒木をじっと見る。

「もしかして、なんか企んでる?
俺やだよー!先生をまた背負い投げして締め上げるの。」

黒木は少しだけ肩をすくめ、
鍋の具材をまぜながら、
いつもの無表情で言う。

「企んでないよ。
っというか…俺だって嫌だよ。
ただ…こうやって君たちの姿をみるのも楽しいね。」

その言い方は淡々としているのに、
どこか優しさが滲んでいて、

その声は静かで、
からかいでも、茶化しでもなくて。

朔がぽかんとし、
私は胸がじんわり温かくなる。

「先生丸くなったよね!」

私がそう笑うと
黒木は続ける。

「はいはい。ほら、早く座って。」

「そうだな!」

「食べよう!」


3人で鍋を囲む。
穏やかで楽しいひとときだ。