万華鏡は月を巻き戻す

そして、朔とは生きているうちにやりたいことリストで
色々なことをした。

旅行にいったり、
食べ歩きしたり、
神社にいったり、
本当に会えなかった時間を埋めるように。

どこへ行っても朔は無邪気に笑って、
時々、大人の顔で私の手を握ってくる。
そのたびに胸が温かくなった。

同棲も初めた。
お揃いのマグカップ、茶碗、お箸を揃えたり
楽しいことばかりだった。

お互い仕事の時間は不定期だったけど、
時間が合う時は、おはようからおやすみまで朔は一緒で手を繋いで眠りにつく。


はじめての喧嘩もした。

「朔さー、新人の可愛い看護師からベタベタされてニヤニヤしてたよね!」

「してないって!」

「してた!!」

「それいうなら、放射線技師の髪がツンツンしてるやつからご飯誘われてただろう?」

朔はむくれた顔で腕を組む。
その表情が昔と変わらなくて、余計に腹が立つ。


「何で知ってるの?
ってか、断ったし!」

「どうなってるの?俺たち公認カップルじゃないの?」

「いや、知らないけど。」

「ねぇ!巧先生これどっちが悪い!?」

「朔だよね!?」

そういうと、

「どうでもいいかな。
痴話喧嘩はよそでやってよ。」

黒木は淡々と返す。
本当に興味なさそうで、
でもその声にはどこか呆れた優しさがあった。

「えー。」

「黒木先生冷たい。」

「それより、鍋作ろうよ。
お腹すいた。」

黒木が立ち上がると、
朔もすぐに表情を切り替える。

「確かに!
俺野菜きる!」

「何鍋にする?
キムチ?」

「いいね。」

「君たちさ。二人とも腎臓いたわりなさいよ。
魚介の出汁を効かせた鍋にするよ。」

「はーい。」

3人でキッチンに立つ。
包丁の音、湯気の匂い、
笑い声が混ざる。