万華鏡は月を巻き戻す

「羽瑠こそ…
変わってない?
恋人とか…いない?」

朔は不安そうにこちらをみる。
大人になった顔なのに、その目だけは昔のままで、胸がきゅっと痛む。

「いないよ。
忘れようもしても…ダメだった。」

湊さんに気持ちを向けようとした時期もあったけどやっぱりうまくいかなかった。
いつでも浮かぶのは、無邪気な朔の笑顔だった。

「そっか。
それにしたってさ、羽瑠きれいになりすぎだよ。」

朔は照れたように笑いながら、
でも本気で言っているのが伝わる。

「え?そう?
朔こそ…かっこよくなってる。」

「ほんと?
嬉しい。」

「うん。」

「話したいこといっぱいあるんだけどさ、
まずは…腎臓ありがとう。
俺の命を繋いでくれたんだね。」

朔は真剣な目でこちらを見る。
その瞳に映る自分が、泣きそうだった。

「うん。
私怒ってるんだよ。」

「え!?」

朔が目を丸くする。
その反応が昔と変わらなくて、胸が熱くなる。

「全部一人で抱え込んで。
カッコつけて終わりにしょうとするなんて…
ほんと、バカ。」

「バカって…。
一応飛び級で研修医になったんだけどね。」

「それはすごいけど…。」

言いながら、
胸の奥がじんわり温かくなる。

朔が生きていて、
こうして目の前で笑っていて、
触れられる距離にいる。

それだけで、
涙が出そうになるほど幸せだった。