万華鏡は月を巻き戻す


「羽瑠に話したいことたくさんあるんだ。」

朔は少し照れたように笑いながら、
でもどこか必死に言葉を探していた。

「私もだよ!」

胸が熱くなる。
声が震えるのを抑えられない。

「うん。これからたくさん話そう。
この先はずっと一緒だ。」

その言い方があまりにも自然で、
まるで“続き”を話しているみたいで、
涙がこぼれそうになる。

「うん。」

「思い出すの遅くなってごめん。」

朔は少しだけ視線を落とした。
その横顔は、昔より大人びていて、
でも根っこの優しさは変わっていなかった。

「ううん、私は怖くて会いに行けなくてごめん。」

「それでも、会えた。
これからまた始めよう。」

「うん。」

言葉を交わすたびに、
会えなかった空白が少しずつ埋まっていく気がした。

私たちは二人で私のアパートにやってきた。

夜の空気は少し冷たくて、
でも朔の隣にいるだけで不思議と安心した。

部屋に入ると、
朔は周りを見渡す。

「これ朔にもらった本に挟まってたの。」

私はそっと紙を差し出す。
朔は目を丸くした。

「うそ!みたの?」

「うん。」

「そっかー、恥ずかしい。」

朔が顔を両手でおおい、
指の隙間からチラッとこちらをみる。
その仕草が昔とまったく同じで、胸が痛くなる。

「このページ。」

「うん。」

私はそっとくっついてたページを見せる。


死ぬまでにしたいことリスト

『大人の羽瑠とまた恋をする。』


指を刺す。

「これ今も変わらない?」

静かな部屋に、
朔の呼吸だけが近くで聞こえる。

「もちろん、
変わらない。」

そう言って朔が私を抱きしめる。

その腕の温度が、
“失われたはずの未来”を取り戻してくれたようで、
私は目を閉じてその胸に顔を埋めた。