万華鏡は月を巻き戻す


提灯みたいなオレンジの照明がゆらゆら揺れて、
テーブルには枝豆と唐揚げ、飲みかけのジョッキが並んでいる。
油とアルコールの匂いが混ざり合う、独特の空気。

「ねぇー、来週から海外で飛び級した天才が研修医として来るらしいよ?」

向こうのテーブルで他の医師たちが盛り上がっている。
声が弾んでいて、まるで学生の飲み会みたいだ。

「え!すごいー。何歳なの?」

「21歳だって!」

「え!わっかーい!」

黄色い声が飛び交い、店内が一気に明るくなる。

「あ、黒木先生と月宮ちゃーん、お疲れ様!」

浅葱先生が手を振りながら近づいてくる。
頬が赤く、すでに出来上がっている。

「浅葱先生、もう出来上がってません?」

私がそう言うと、

「やだなぁ〜全然よ〜」

浅葱先生は黒木の肩をぽんぽん叩く。
黒木は迷惑そうに眉をひそめた。

「それにしても二人は仲良しね。付き合ってるの?」

「それはないです。」

私は即答する。
黒木も腰をおろしながら、

「腐れ縁みたいな感じですね。
ずっと見張られてるんですよ。僕が悪さしないように。」

淡々と、でもどこか楽しそうに言う。
浅葱先生はケラケラ笑い、

「なにそれ、面白い!ってか、お似合いなのにね〜」

なんて茶化してくる。

私はため息をつき、黒木の横顔を見る。

黒木は相変わらず無表情。
飲んでいる割に、顔色ひとつ変わらない。