万華鏡は月を巻き戻す

羽瑠28歳。

看護師としての仕事にもすっかり慣れ、
新人指導や病棟のリーダーも任されるようになった。

そして黒木との関係も、変わらず続いている。

恋仲なんて甘いものじゃない。
都合のいいときに呼び出され、話し相手になり、
ご飯に付き合い、学会にも駆り出される。

――なんか、いいようにされてる気がする。

そして今日も。

「あのー、夜勤明けに呼び出さないでもらえます?
しかも先生達の飲み会に。そして眠いんですけど!」

私は目の下のクマを押さえながら文句を言う。
黒木は面倒くさそうにこちらを見た。

「君が言ったんだよ。僕の都合のいい奴隷になるって」

「そんなこと言ってません。
話し相手くらいです。ほんとに時間外手当ほしい」

「いいじゃん。
来週から正式に来る研修医の子が、顔を出しに来るからさ。」

「へぇ。」

興味なさそうに返すと、黒木は肩をすくめた。

「ほら、中に入るよ。」

「はーい。」

2人で居酒屋に入る。