万華鏡は月を巻き戻す


湊さんと付き合い始めて1年が経とうとしたころ、
私たちは夏祭りに行った。

浴衣を着て、手をつないで歩く。
屋台の灯りが揺れて、どこか懐かしい匂いがした。

「羽瑠ちゃん。りんご飴あるよ。食べる?」

「はい。」

りんご飴――
朔が好きだったな。

どこに行っても、何をしていても、
私はいつも朔を探している。

気づけば、ぽろりと涙がこぼれた。

「羽瑠ちゃん?どうしたの?
足痛かった?ごめんね、気づかなくて……」

湊さんが心配そうに覗き込む。

「ち、ちがうんです……ご、ごめんなさい。」

このままじゃダメだ。
私はゆっくりと息を吸う。

「湊さん……私と別れてください。」

「……え?」

「忘れようとしたけど、忘れられないんです。
湊さんの優しさに甘えて、私……ずっと彼を探してる。
最低なんです。」

震える声で言うと、
湊さんはゆっくりと私を抱きしめた。

「それでもいいよ。
俺は……君の一番じゃなくても、そばにいられるならそれでいい。」

「それじゃあ……私が自分を許せないんです。
本当に、ごめんなさい。」

しばらく沈黙が落ちたあと、
湊さんは小さく息を吐いた。

「そっか……俺は、その人を越えられなかったんだな。」

「ご、ごめんなさい……。」

「謝らなくていいよ。
羽瑠ちゃんは……悪くない。」

最後まで優しかった。
湊さんを好きになれていたら、
きっと幸せだったのだろう。

でも――
心は、どうしても朔を手放せなかった。