万華鏡は月を巻き戻す

しばらく泣き続けていると、
スマホが震えた。

画面がにじんでよく見えない。
涙を拭って、そっと確認する。

そこに表示されていた名前は――


――黒木病院。

「お爺ちゃんが危篤? すぐ行きます!」

胸がざわつく。
私は急いでTシャツとショートパンツに着替え、カバンをもって家を飛び出した。

この時間ならタクシーが早い。
手を挙げるとすぐに車が止まり、私は慌てて乗り込んだ。


病院に着くと、
ベッドで、お爺ちゃんが静かに眠っていた。

「よ、よかった……。」

胸を撫で下ろした瞬間、蓮水先生が現れた。

「ごめんね。少し心拍が落ちたから、一応連絡したんだ。」

申し訳なさそうに微笑む。

「いえ……とりあえず、良かったです。」

「ご両親はいまはいないんだよね?」

「あ、はい。旅行に行ってて、明日帰ってくる予定です。
あれ……どうしてそれを?」

「湯浅さんから聞いたんだよ。
何かあったら君に一番に連絡するようにって。」

「あ、そうなんですね。
あれ、じゃあ叔父は来てますか?」

「来てないね。」

「え……? さっき蓮水先生、連絡したって言ってましたよね?」

「そうだったかな?」

蓮水先生は、
まるで“試すように”
意味深に微笑んだ。

その笑顔は、優しいのに――
どこか、底が見えなかった。

胸の奥がざわりと揺れる。

何かがおかしい。
何かが、噛み合っていない。