万華鏡は月を巻き戻す

りんご飴を食べ終えたところで、朔が柔らかく微笑む。

「花火もう少しだって。よく見えるところ行こうか。」

「うん。」

「穴場があるんだ。」

朔に手を引かれて、少し離れた高台へ向かう。
人混みから離れたその場所は、風が通って気持ちよかった。

「ここ座って。」

ベンチに腰掛けると、浴衣の裾がふわりと揺れた。

「ありがとう。」

「足、痛くない?」

「平気。」

「そっか。」

少しの沈黙。
遠くから聞こえる祭りのざわめきが、逆に静けさを際立たせる。

「ねぇ、朔…。
私、もう殺されないってことだよね?」

朔はまっすぐこちらを見る。

「大丈夫。
黒木院長とも話したし、羽瑠に手出しさせないように手は打ってあるから。」

「ありがとう。なんか朔に守られてばっかりだね。」

「そんなことないよ。
俺だって羽瑠に守られてきたんだよ。」

「そんなことないよ。」

「あるよ。」

朔がふっと笑う。
その笑顔が、胸にしみる。

でも――
朔がいなくなってしまいそうで怖い。
聞きたいのに、聞いたら壊れてしまいそうで。

「朔…明日も一緒だよね。」

その問いに、朔は一瞬だけ困ったように目を伏せて、
それから優しく笑った。

その“間”が、胸に刺さる。

ぱあん――。

夜空に大きな花火が咲いた。

「花火だ。綺麗だね。」

朔は花火を見上げる。
でも私は、朔の横顔を見ていた。

やっぱり…肯定しなかった。
さよならが近いんだ。
だったら――。

「朔。」

そっと手を引く。

朔がこちらを向いた瞬間、
私はその頬に触れて、軽くキスをした。

触れたのはほんの一瞬。
でも、胸の奥が熱くなる。

「大好き。
この先もきっと…私は朔を思ってる。」

花火の光が、朔の瞳に揺れていた。
その表情が、切なくて、優しくて、
胸がぎゅっとなる。