万華鏡は月を巻き戻す


浴衣を着て、そっとリビングに戻る。

「どうかな…?」

朔がこちらを見た瞬間、
目を丸くして、みるみる頬が赤くなる。

「羽瑠…すごい可愛い。
可愛すぎてやばい。」

その素直すぎる言葉に、胸がくすぐったくなる。

「青春だねー。」

「だねー!」

透さんと友梨ちゃんが楽しそうに笑う。
その空気がまた嬉しい。

2人で透さんの家を後にする。

外に出た途端、朔がぽつり。

「可愛すぎる…直視できないんだけど。」

「朔に見せたくて着せてもらったのに?」

そう言って、わざと顔を覗き込むと――

「う、嬉しい。」

朔は耳まで真っ赤になって、
でもちゃんと手を繋いでくれた。

その手が、浴衣越しでもあたたかい。

出店を回って、たくさん笑って、
金魚すくいの水音、焼きそばの匂い、
遠くで響く太鼓の音。

カラン、コロン――
下駄の音が夜の道に軽く響く。

夏の空気が胸いっぱいに広がって、
一瞬だけ、不安を忘れそうになる。

朔の横顔は、
屋台の灯りに照らされて、
いつもより少し大人っぽく見えた。