万華鏡は月を巻き戻す

「お祭り、何時から行く?」

「うーん、どうしよっか。」

そう話していたところで、
スマホが突然鳴った。

『もしもし…羽瑠、大丈夫?』

母の声が聞こえた瞬間、
私は思わず背筋を伸ばした。

(やば…普通にお泊まりしてたなんてバレたらまずい。)

「うん、平気。」

『明日の夜には帰るからね。』

「わかったよ。」

『そうそう、朔くんと今日お祭りデートでしょ。』

まさかの名前が出てきて、
心臓が跳ねる。

横を見ると、
朔は頬杖をつきながらニヤッと笑っていた。

「うん、そうだけど。」

『真実さんに浴衣の着付け頼んであるから、行っておいで。』

「あ、ほんとに?」

『うん。楽しんできてね。』

通話が切れた瞬間、
私は大きく息を吐いた。

「はー…ひやっとした。」

私がそういうと、朔が肩をすくめる。

「さすがに無断外泊はまずいよね。
いくら旅行に行ってるとは言え…。」

「内緒ね。」


「うん。俺が殴られる。」

朔がふっと笑う。
その軽さに、緊張が少しだけほどけた。