万華鏡は月を巻き戻す


朝――。

今日は夏祭り。
私が“殺された日”。

きっと今日を乗り切れば大丈夫。
全部終わる。
もう大丈夫なはず。

……だけど、朔とはどうなるんだろう。

「おはよう、羽瑠。
朝ごはん作ったから食べよ。」

いつもと変わらない、爽やかな笑顔。

「うん。顔洗ってくる。」

洗面所の鏡に映る自分を見つめる。
目の奥が少しだけ揺れている。

ちゃんと…笑わなきゃ。
もう少しで、お別れになるかもしれないのに。

深呼吸して、部屋に戻る。

「よく眠れた?」

「うん。
いただきます。」

「どうぞ。」

2人で並んで朝ごはんを食べる。
味噌汁の湯気がふわっと上がって、
焼き魚の香りがほっとさせる。

こんな普通の朝が、
こんなに愛おしいなんて思わなかった。

朔はいつも通りで、
私だけが今日を意識している。

この時間が終わってしまうのが怖い。
でも、ちゃんと今日を迎えなきゃいけない。

箸を動かしながら、
胸の奥がじんわり痛む。