綾子の誕生日パーティーは、豪奢の極みだった。
鶴也が溺愛する彼女のため、会場には媚びへつらう者たちが数知れず集まっていた。
「綾子ちゃん、斉藤さんは本当にあなたに甘いわね。この別荘まで貸してくれるなんて!」
斉藤家の別荘は代々受け継がれてきたもので、綾子のような「外の人間」が足を踏み入れること自体、本来ありえないのだ。
綾子は微笑みながら、目に強い決意を宿していた。
「でも、斉藤さんは?」
パーティーが中盤を迎えた頃、鶴也は一人、ソファに沈み込んでいた。
その指先は携帯の画面を滑り続けていた。
画面には、時絵とのチャット画面が映し出されていた。
空白のまま、既読も返信もなかった。
──最後のやりとりは、二日前。
怪我がそんなに酷いのか?
携帯すら見られない状態なのか?
そんな不安が胸をよぎり、彼は立ち上がろうとした。
その瞬間、会場の照明が一斉に落ちた。
綾子がステージに上がり、熱い視線で彼を見つめていた。
鶴也が困惑していると、彼女は突然書斎のドアを開けた。
そこには、綾子のあらゆる角度からの写真が、まるで展示品のように並べられていた。
会場は一瞬にして騒然となった。
「これって盗撮じゃない?」
「うわ……この角度、本当に叔父と姪なのか……?」
……
ざわめきは瞬く間に広がり、会場中の視線が二人に集まった。
綾子は、その反応を待っていたかのように唇を持ち上げ、微笑んだ。
「おじさん、まさか私にこんな気持ちがあったなんて……知らなかったわ」
彼女の顔はほんのり赤く、恥じらいすら浮かんでいるように見えた。
──これは、鶴也のすべてを白日の下にさらすための演出。
世間の目の前で、自分に対する「やましい感情」を暴露させるため。
そうしなければ、彼を縛り付け、自分を受け入れさせることはできないのだ。
彼女はゆっくりと鶴也に近づき、背伸びをして頬に口づけを落とした。
「私も……おじさんのこと、好き……なの」
その言葉は、静かな水面に放り込まれた重石のように、凄まじい波紋を呼んだ。
記者たちが次々にカメラを向け、シャッター音が響いた。
鶴也のこめかみが脈打った。
──まさか綾子がこの秘密を掴んでいたとは……
しかも、それをこんな場所で……
たしかに、俺は綾子が好きだった。
しかし——
今、彼女からの告白を受けても、心は微動だにしなかった。
むしろ、違和感と恐怖が胸を締めつけた。
「おじさん……嬉しい?」
綾子は答えを求めるように、期待を込めて彼を見つめた。
会場の全員も、その答えを待っていた。
「そういえば、斉藤さんって彼女いるんじゃなかった?小林時絵って、すごく彼のこと好きだったじゃない?」
「知らなかったの?彼女なんて、ただの隠れ蓑だよ……」
誰かが時絵の名前を出したその瞬間——
鶴也の脳内で、何かがはじけた。
彼は綾子を突き飛ばし、会場の全員を即座に退場させた。
綾子は状況がまずいと悟った。
──この日のために何社ものメディアに依頼していたのに。
これでは記事にならない!
「おじさん、どうしたの……?」
鶴也は彼女を睨みつけ、苛立ちと不快感を隠さずに口を開いた。「なぜ、こんなことをした?」
綾子は唇を噛みしめ、拳をぎゅっと握りしめた。
妬みと執着が、心の中で渦を巻いていた。
──彼は、怒っている。
なぜなら、自分が勝手にこの秘密を晒してしまったから。
けれど――愛とは、欲しいものを手に入れたいという欲望だ。
彼がその気持ちを返してくれないのなら、そこには「別の誰か」がいるということ。
その誰かは――時絵。
綾子は無理やり涙ぐんだ表情を作り出した。「……おじさんは私のこと、好きだったでしょう?私も好きよ。だったら、何も問題なんてないわよね?」
その一言が、鶴也を沈黙させた。
──確かに俺は綾子を愛している。
長年、彼女を独占してきたことも事実だ。
心の奥で膨らみ続ける欲望も。
だが、ここ最近、その感情に微妙な違和感を抱くようになっていた。
綾子の告白に、驚きも興奮もない。
むしろ心は空虚で、頭の中はもう一人の女で占められていた。
鶴也の沈黙が、綾子を焦らせた。
──ここまで来たのに、もう後には引けない!
そう思った瞬間、綾子は隙をついて彼の唇に再びキスを重ねた。
一瞬、彼の脳裏が白くなった。
咄嗟に拒もうとするも、綾子の動きは止まらなかった。
彼女はさらに深くキスを続けた。
その手は、次第に彼の下半身へと伸びていった。
「……私、おじさんが好き。どうして拒むの?一番大切にしてくれてたのは、私じゃなかった?まさか、あの女のこと、本当に好きになったんじゃないでしょうね……?」
その甘ったるい声の中には、醜い嫉妬が渦巻いていた。
表情は微笑みながらも、眼差しは怒りと焦燥に濁っていた。
彼女は誰よりも、鶴也が本当に時絵を好きになったかどうかを分かっていた。
鶴也は即座に否定した。「ち、違うんだ」
だが、彼の心臓は激しく鼓動していた。
──俺は、時絵を……?
ありえない!
「彼女、まだ姿も見せてないんでしょう?もしかして、最初からそんなに好きじゃなかったのよ。……ただの気まぐれだったのかも」
──気まぐれ……?
その言葉が、彼の中の何かを刺した。
──いや、時絵はプライドの高い女だ。
気まぐれなどありえない。
むしろ、自分を屈服させるための策略だろう。
しかし、この数日間の彼女の行動を思い返すと、鶴也の表情は険しくなった。
──俺は騒ぎ立てる女は嫌いだ。
もし本当にそうなら、時絵の傲慢さを挫いてやる必要がある。
「おじさん、愛してる」
綾子の熱を帯びた吐息が、彼の理性の最後の糸を断ち切った。
彼は、衝動のまま彼女の唇を奪った。
そして、狂おしい熱が、闇の中に満ちていった──
鶴也が溺愛する彼女のため、会場には媚びへつらう者たちが数知れず集まっていた。
「綾子ちゃん、斉藤さんは本当にあなたに甘いわね。この別荘まで貸してくれるなんて!」
斉藤家の別荘は代々受け継がれてきたもので、綾子のような「外の人間」が足を踏み入れること自体、本来ありえないのだ。
綾子は微笑みながら、目に強い決意を宿していた。
「でも、斉藤さんは?」
パーティーが中盤を迎えた頃、鶴也は一人、ソファに沈み込んでいた。
その指先は携帯の画面を滑り続けていた。
画面には、時絵とのチャット画面が映し出されていた。
空白のまま、既読も返信もなかった。
──最後のやりとりは、二日前。
怪我がそんなに酷いのか?
携帯すら見られない状態なのか?
そんな不安が胸をよぎり、彼は立ち上がろうとした。
その瞬間、会場の照明が一斉に落ちた。
綾子がステージに上がり、熱い視線で彼を見つめていた。
鶴也が困惑していると、彼女は突然書斎のドアを開けた。
そこには、綾子のあらゆる角度からの写真が、まるで展示品のように並べられていた。
会場は一瞬にして騒然となった。
「これって盗撮じゃない?」
「うわ……この角度、本当に叔父と姪なのか……?」
……
ざわめきは瞬く間に広がり、会場中の視線が二人に集まった。
綾子は、その反応を待っていたかのように唇を持ち上げ、微笑んだ。
「おじさん、まさか私にこんな気持ちがあったなんて……知らなかったわ」
彼女の顔はほんのり赤く、恥じらいすら浮かんでいるように見えた。
──これは、鶴也のすべてを白日の下にさらすための演出。
世間の目の前で、自分に対する「やましい感情」を暴露させるため。
そうしなければ、彼を縛り付け、自分を受け入れさせることはできないのだ。
彼女はゆっくりと鶴也に近づき、背伸びをして頬に口づけを落とした。
「私も……おじさんのこと、好き……なの」
その言葉は、静かな水面に放り込まれた重石のように、凄まじい波紋を呼んだ。
記者たちが次々にカメラを向け、シャッター音が響いた。
鶴也のこめかみが脈打った。
──まさか綾子がこの秘密を掴んでいたとは……
しかも、それをこんな場所で……
たしかに、俺は綾子が好きだった。
しかし——
今、彼女からの告白を受けても、心は微動だにしなかった。
むしろ、違和感と恐怖が胸を締めつけた。
「おじさん……嬉しい?」
綾子は答えを求めるように、期待を込めて彼を見つめた。
会場の全員も、その答えを待っていた。
「そういえば、斉藤さんって彼女いるんじゃなかった?小林時絵って、すごく彼のこと好きだったじゃない?」
「知らなかったの?彼女なんて、ただの隠れ蓑だよ……」
誰かが時絵の名前を出したその瞬間——
鶴也の脳内で、何かがはじけた。
彼は綾子を突き飛ばし、会場の全員を即座に退場させた。
綾子は状況がまずいと悟った。
──この日のために何社ものメディアに依頼していたのに。
これでは記事にならない!
「おじさん、どうしたの……?」
鶴也は彼女を睨みつけ、苛立ちと不快感を隠さずに口を開いた。「なぜ、こんなことをした?」
綾子は唇を噛みしめ、拳をぎゅっと握りしめた。
妬みと執着が、心の中で渦を巻いていた。
──彼は、怒っている。
なぜなら、自分が勝手にこの秘密を晒してしまったから。
けれど――愛とは、欲しいものを手に入れたいという欲望だ。
彼がその気持ちを返してくれないのなら、そこには「別の誰か」がいるということ。
その誰かは――時絵。
綾子は無理やり涙ぐんだ表情を作り出した。「……おじさんは私のこと、好きだったでしょう?私も好きよ。だったら、何も問題なんてないわよね?」
その一言が、鶴也を沈黙させた。
──確かに俺は綾子を愛している。
長年、彼女を独占してきたことも事実だ。
心の奥で膨らみ続ける欲望も。
だが、ここ最近、その感情に微妙な違和感を抱くようになっていた。
綾子の告白に、驚きも興奮もない。
むしろ心は空虚で、頭の中はもう一人の女で占められていた。
鶴也の沈黙が、綾子を焦らせた。
──ここまで来たのに、もう後には引けない!
そう思った瞬間、綾子は隙をついて彼の唇に再びキスを重ねた。
一瞬、彼の脳裏が白くなった。
咄嗟に拒もうとするも、綾子の動きは止まらなかった。
彼女はさらに深くキスを続けた。
その手は、次第に彼の下半身へと伸びていった。
「……私、おじさんが好き。どうして拒むの?一番大切にしてくれてたのは、私じゃなかった?まさか、あの女のこと、本当に好きになったんじゃないでしょうね……?」
その甘ったるい声の中には、醜い嫉妬が渦巻いていた。
表情は微笑みながらも、眼差しは怒りと焦燥に濁っていた。
彼女は誰よりも、鶴也が本当に時絵を好きになったかどうかを分かっていた。
鶴也は即座に否定した。「ち、違うんだ」
だが、彼の心臓は激しく鼓動していた。
──俺は、時絵を……?
ありえない!
「彼女、まだ姿も見せてないんでしょう?もしかして、最初からそんなに好きじゃなかったのよ。……ただの気まぐれだったのかも」
──気まぐれ……?
その言葉が、彼の中の何かを刺した。
──いや、時絵はプライドの高い女だ。
気まぐれなどありえない。
むしろ、自分を屈服させるための策略だろう。
しかし、この数日間の彼女の行動を思い返すと、鶴也の表情は険しくなった。
──俺は騒ぎ立てる女は嫌いだ。
もし本当にそうなら、時絵の傲慢さを挫いてやる必要がある。
「おじさん、愛してる」
綾子の熱を帯びた吐息が、彼の理性の最後の糸を断ち切った。
彼は、衝動のまま彼女の唇を奪った。
そして、狂おしい熱が、闇の中に満ちていった──
