「文化祭の準備、今日からだからなー」
担任の声が教室に響く。
ざわっと空気が明るくなる。
「何やる?」
「模擬店?」
「絶対楽しそう!」
周りが盛り上がる中。
私は、ひとり静かに座っていた。
こういうのは、苦手。
目立つし。
関わらないといけないし。
「シロ」
名前を呼ばれる。
顔を上げると。
神崎くん。
「お前、何やる」
「……決めてません」
「じゃあ一緒でいい」
「……え」
「俺、装飾やるから」
勝手に決める。
「……嫌です」
反射的に言う。
「なんで」
「……」
理由なんて、言えない。
近くにいたら。
また、揺れるから。
「別にいいじゃん」
あっさり言う。
「何もしねぇって言っただろ」
「……っ」
その言葉に。
少しだけ、胸が揺れる。
「距離は保つ」
「……」
「だから一緒にやれ」
強引。
でも。
前みたいに、怖くない。
「……わかりました」
小さく頷く。
――放課後。
教室に残って、装飾の準備。
色紙。
ハサミ。
テープ。
静かな空間。
「……」
気まずい。
何を話せばいいかわからない。
「そこ、貸せ」
手が伸びてくる。
ハサミを取られる。
「……ありがとうございます」
「敬語やめろ」
「……」
「距離感じる」
「……感じてます」
思わず言ってしまう。
一瞬、沈黙。
でも。
「そりゃそうか」
否定しない。
「でもさ」
少しだけ、こちらを見る。
「前よりはマシだろ」
「……」
答えられない。
でも。
否定もできない。
「ほら」
ふっと、紙を差し出される。
「ここ、貼るとこ」
「……はい」
受け取る。
指が、少し触れる。
「……っ」
びくっとする。
「悪い」
すぐに手を離す。
「……いえ」
心臓が、うるさい。
でも。
怖くない。
前みたいに。
嫌じゃない。
むしろ。
――少しだけ。
落ち着く。
「……なあ」
「はい」
「なんで泣いたの」
手が止まる。
「……」
答えたくない。
でも。
「……怖かったからです」
小さく言う。
「何が」
「……同じこと、されると思って」
一瞬。
空気が止まる。
「……ああ」
低く、呟く。
「ごめん」
もう一度。
「ほんとに」
さっきよりも、静かに。
「……」
その声が。
少しだけ。
優しかった。
「でも」
続ける。
「もうしねぇから」
「……」
「約束」
まっすぐに言う。
その言葉に。
胸が、じんわり温かくなる。
「……はい」
気づけば。
少しだけ、笑っていた。
――その距離は。
まだ遠いけど。
でも。
確実に、変わっていた。
担任の声が教室に響く。
ざわっと空気が明るくなる。
「何やる?」
「模擬店?」
「絶対楽しそう!」
周りが盛り上がる中。
私は、ひとり静かに座っていた。
こういうのは、苦手。
目立つし。
関わらないといけないし。
「シロ」
名前を呼ばれる。
顔を上げると。
神崎くん。
「お前、何やる」
「……決めてません」
「じゃあ一緒でいい」
「……え」
「俺、装飾やるから」
勝手に決める。
「……嫌です」
反射的に言う。
「なんで」
「……」
理由なんて、言えない。
近くにいたら。
また、揺れるから。
「別にいいじゃん」
あっさり言う。
「何もしねぇって言っただろ」
「……っ」
その言葉に。
少しだけ、胸が揺れる。
「距離は保つ」
「……」
「だから一緒にやれ」
強引。
でも。
前みたいに、怖くない。
「……わかりました」
小さく頷く。
――放課後。
教室に残って、装飾の準備。
色紙。
ハサミ。
テープ。
静かな空間。
「……」
気まずい。
何を話せばいいかわからない。
「そこ、貸せ」
手が伸びてくる。
ハサミを取られる。
「……ありがとうございます」
「敬語やめろ」
「……」
「距離感じる」
「……感じてます」
思わず言ってしまう。
一瞬、沈黙。
でも。
「そりゃそうか」
否定しない。
「でもさ」
少しだけ、こちらを見る。
「前よりはマシだろ」
「……」
答えられない。
でも。
否定もできない。
「ほら」
ふっと、紙を差し出される。
「ここ、貼るとこ」
「……はい」
受け取る。
指が、少し触れる。
「……っ」
びくっとする。
「悪い」
すぐに手を離す。
「……いえ」
心臓が、うるさい。
でも。
怖くない。
前みたいに。
嫌じゃない。
むしろ。
――少しだけ。
落ち着く。
「……なあ」
「はい」
「なんで泣いたの」
手が止まる。
「……」
答えたくない。
でも。
「……怖かったからです」
小さく言う。
「何が」
「……同じこと、されると思って」
一瞬。
空気が止まる。
「……ああ」
低く、呟く。
「ごめん」
もう一度。
「ほんとに」
さっきよりも、静かに。
「……」
その声が。
少しだけ。
優しかった。
「でも」
続ける。
「もうしねぇから」
「……」
「約束」
まっすぐに言う。
その言葉に。
胸が、じんわり温かくなる。
「……はい」
気づけば。
少しだけ、笑っていた。
――その距離は。
まだ遠いけど。
でも。
確実に、変わっていた。



