こちら側の百合園さん【1話からの長編大賞】

 登校中、廊下を歩いている時、昼休みに放課後。油断していると、それは突然やってくる。
 どこからともなく足音が聞こえて、気付いたときには、時すでに遅し。

「まーくん! こんなところにいたんですね〜! 探しましたよ」

 こんな感じで背後から、三又依子に飛びつかれるのだ。

「……いい加減、離れてください。もう子どもじゃないんだから」
「ごめんなさーい。つい」

 何度言っても忘れるらしく、毎日のように僕を追いかけてくる。生徒会長のくせして、暇なんだろうか。
 図書室へ向かう最中、なぜか隣に並ぶ影。

「……あの、なんでついてくる?」
「気にしないでください」

 そんなにこやかに言われても。一緒にいるところを、百合園さんに見られたくない。
 歩幅を広げて、素早く図書室へ入った。もちろん、三又依子も金魚の糞のようにいる。監視されているみたいで、体が縮こまってしまう。
 奥の本棚で借りたい本を探していると、誰かと肩が当たった。百合園さんだ。

「山田くん! ……と、三又先輩。仲、良いね」

 背後からひょこっと顔を出す人物に恨みはないが、今だけは出て来て欲しくなかった。

「そんなことないよ」
「よく一緒にいるの見かけるから」

 やっぱり、目撃されていたのか。
 と言うことは、引っ付かれている場面も見ていることになる。徹底的に、死にたくなって来た。

「……三又先輩」
「なんでしょうか?」
「もしも、幼馴染がいたとしたら……恋愛対象になりますか?」

 一度手にした本を棚へ戻しながら、百合園さんがつぶやく。目を見ることなく、ほんのり頬を染め上げて。