こちら側の百合園さん【1話からの長編大賞】

 手紙の練習に付き合ってから、4日と23時間が過ぎようとしている。
 渡すつもりだと言っていた来週が訪れたわけだが、今のところその動きはない。朝はずっと教室にいるし、昼休みも変わらず裏庭へ来てムタと遊んで帰る。
 成瀬琉生と付き合い始めた素振りがないと確認して、今日もほっと胸を撫で下ろしたところだ。

「ねえねえ、どれにする〜? チョコ付けるなら、やっぱり塩ポテだよねぇ」

 コンビニの菓子棚とにらめっこをしながら、百合園さんがポテトチップスを手に取った。

「おっ、百合園さんやるなぁ〜! じゃあ、俺はこれ」

 その隣で、崎田がドーナツを入れようとしたところ、大量のマシュマロをドサッとカゴへ放り込まれる。

「鬼頭さん、ちょっと買いすぎじゃね?」
「チョコパつったら、本命はマシュマロだろ! こんくらいはいる」
「……そっすね!」

 楽しそうに買い物をする3人の端で、僕は浮かない顔をしていた。
 話の成り行きで、これからチョコパーティーをすることになったのだ。しかも、なぜか僕の家で。

 だから今、自宅近くのコンビニで買い出しをしているのだが、落ち着かない。
 どれほどかと言うと、ステージでスポットライトを浴びながら、劇の主役をやっているくらい生きた心地がしていない。

 みんなが飲み物ゾーンへ行ってからも、そわそわして動けなかった。
 早く終わってくれないかな。
 本売り場をチラリと確認しつつ、その場を離れようとした。

「あれー? 山田じゃね?」

 ぞくりと、心臓が飛び上がる。一歩踏み出した足が、震えていた。