こちら側の百合園さん【1話からの長編大賞】

「……もしかして、迷惑だったかな」
「そ、そうじゃなくて……!」

 ただ、字が分かりづらかったと告白したかっただけなのに、勘違いしているらしい。
 慌てて否定したのがまずかったか、百合園さんはさらに憂いため息をついて。

「この前もね、成瀬先輩に想いを伝えたんだけど、返事をもらえなかったの」
「……えっ?」

 想いって……いわゆる愛の告白ってやつだよな?
 昨日、あんなお願いをされたから、てっきり自分がヒーローポジションになれるものだと思ってたのに。
 くそぉ、僕は噛ませ犬だったのか。早とちりで、変な発言をしなくて良かった。

「……へぇー、成瀬先輩にね」

 あからさまな棒読みになっているけど、致し方ない。
 人間、驚きのあまり空いた口が塞がらないというのは、あながち嘘じゃないらしい。

「生まれて初めて書いてみたんだけど、やっぱり迷惑だったのかな」
「書く……手紙?」
「うん、文字にした方が、気持ち伝わるかなぁって思ったんだけど」

 うつむき加減で、少し瞳が潤んでいるようにも見受けられた。
 本人は真剣に悩んでいるんだ。はっきり教えてやらないと、また百合園さんが傷付く前に。
 それはフラれたのではなく、暗号を解けなかっただけなのだと。

「あの……もし、よかったら、書き方教えましょう……か」
「えっ、山田くんもお手紙出したことあるの?」
「いや、それはないけど。一文字ずつ気持ちを込めたら、たぶんイケるんじゃないかと」