こちら側の百合園さん【1話からの長編大賞】

 ベッドでくつろごうとしてすぐ、インターホンが鳴った。宅配か何かだろうと気にしていなかったが、そのうち階段を上る足音が聞こえて来た。

 僕の荷物か? 最近、ネットで何か買ったかな。
 心当たりがなく、なんとなくドアを開けると。目の前に、背景に花を背負った美少女が立っていた。
 ゆ、百合園さんじゃないか⁉︎

「……おじゃまします。来ちゃった」
「…………!!!!」

 言葉にならない声をあげて、僕は腰を抜かす。足に力が入らない。

「な、なんで……?」

 たしかに、数日前来るような話はしていた。都合の良い日は、今日だとも僕が言った。
 でも、まだ時間も決めていなかったし、あれから返事が来なかったから、てっきりこの話は流れたのだとばかり思っていたのに。

「さっきココアしたんだけど……まだ見てない?」

 ベッドの上に置き去りにしてあったスマホを慌てて掴む。
 ほんとうだ。今から行くって、1時間前に連絡が来ていた。下でアルバムなんか見ていたから、全く気付かなかった。

「迷惑……だったかな」
「いや、そういうわけでは。ただ、驚いて」

 これは夢なのか? 
 百合園さんが、僕の部屋にいる。同じ空気を吸っている。
 ……今の表現は、ちょっと気持ち悪かったな。自覚はある。それほど異常事態ということだ。
 おすすめの漫画を貸して欲しいと言われていたから、リストアップしたものを渡した。

「わざわざ書いてくれたの?」
「タイトルと、ちょっとしたあらすじと見どころみたいなの。ほとんど持ってるから、気になるのあったら、貸せるよ」
「……ありがとう。じゃあ、このヨミガミっていう神様の見てみたいな」

 渡すとき、少し指先が触れただけで、僕の心臓は壊れそうになった。