こちら側の百合園さん【1話からの長編大賞】

 ポロンポロンと、百合園さんから連続して文字が送られて来る。

『一生懸命』
『諸行無常』
『二足三文』
『一石二鳥』
『効果覿面』
『有為転変』
『用意周到』

 今度は、なんだ?
 四文字熟語がずらりと並んでいる。漢字ばかりで、少し怖い。前に誤送されたメモ書きを思い出した。

『あの、これは、なに?』

 返しつつ、消そうとしたテロップを押してしまったから、グループトークが開く。
 こちらはこちらで、話が進んでいた。崎田が、山田はどうするんだと呼びかけている。

『なんでもないよ』

 上に出た文字を目で追って、考える。
 なにも意味なく、あんな四字熟語を送ってくるとは思えないのだが。

 もう一度、百合園さんとのトークを開く。
 一生懸命、諸行無常……有為転変。もしかしたら、僕に変われとメッセージを込めていたのか?
 だとしたら、さっきの返信はあきれられたのかもしれないな。

『人の多くないところならいいんだけど』

 意を決して、送ってみた。まずは、少しずつ人に慣れることからだ。
 寝転んでいたソファーに、いつの間にか正座して、スマホを真剣に覗き込む。

『たとえば、どんなところ?』

 聞かれて、うーんと首を捻る。
 学校ほどの人数が一同に集まる場所は、どうも苦手だ。だから、テーマパークやイベントものは極力避けたい。
 人口密度の低い……落ち着く場所……。