「あっれー? 六花ちゃん、傘ないの?」
後ろから、成瀬琉生がやって来た。
なんというタイミング。まるで見計っていたような、少女漫画のヒーローじゃないか。
「えっと、あ……はい」
緊張しているのか、百合園さんの声が小さくなる。
想いを寄せる相手なのだから、無理もない。
「よかったら、駅まで俺の傘に入ってく?」
うわー! さらっと言った。これがモテる奴とそうじゃない奴の差か。悔しいけど、これが現実だ。
さて、いつも通り帰るか。
「ありがとうございます。でも、山田くんが入れてくれるらしいので、大丈夫です」
「……ええっ?!」
僕の差す傘の中へ、百合園さんが入り込んで来る。
桃色に染まる横顔が妙に色っぽく感じた。
もしかして、僕の方が緊張しなくて済むとか……そういうことか?
「お腹痛いんでしょ? 送ってあげる」
「あ、いや……それは嘘で」
「ふふっ、知ってる。わたしも嘘だから」
「……なんだ。まあ、本気にしてなかったけど」
自然と合わさる歩幅は、少しずつ狭くなっていく。
駅へ着く時間が少しでも、遅まってくれたら。
「そうじゃなくって」
「……なに?」
「なんでもない」
目に映る横顔は、まだほんのりと赤らんだままだ。
深く考えるな。今はただ、こうして彼女と肩を並べて歩けるだけで、奇跡なのだから。
後ろから、成瀬琉生がやって来た。
なんというタイミング。まるで見計っていたような、少女漫画のヒーローじゃないか。
「えっと、あ……はい」
緊張しているのか、百合園さんの声が小さくなる。
想いを寄せる相手なのだから、無理もない。
「よかったら、駅まで俺の傘に入ってく?」
うわー! さらっと言った。これがモテる奴とそうじゃない奴の差か。悔しいけど、これが現実だ。
さて、いつも通り帰るか。
「ありがとうございます。でも、山田くんが入れてくれるらしいので、大丈夫です」
「……ええっ?!」
僕の差す傘の中へ、百合園さんが入り込んで来る。
桃色に染まる横顔が妙に色っぽく感じた。
もしかして、僕の方が緊張しなくて済むとか……そういうことか?
「お腹痛いんでしょ? 送ってあげる」
「あ、いや……それは嘘で」
「ふふっ、知ってる。わたしも嘘だから」
「……なんだ。まあ、本気にしてなかったけど」
自然と合わさる歩幅は、少しずつ狭くなっていく。
駅へ着く時間が少しでも、遅まってくれたら。
「そうじゃなくって」
「……なに?」
「なんでもない」
目に映る横顔は、まだほんのりと赤らんだままだ。
深く考えるな。今はただ、こうして彼女と肩を並べて歩けるだけで、奇跡なのだから。



